Hotel 凪灯 Hakodate

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港の記憶に灯をともす 〜Hotel 凪灯 が描く、新しい旅の始まり〜

北海道・函館。石畳の坂道と尖塔が織りなす元町の街並みに、静かに灯る宿がある。「Hotel 凪灯(なぎび)」──その名の通り、穏やかな海とやわらかな灯りが旅人を包み込むこの場所は、旅の終わりではなく、始まりとしての宿をコンセプトに誕生した。教会や洋館、港の汽笛の名残が残るこの街には、幾つもの季節が折り重なるようにして時間が流れている。そんな歴史ある街並みの一角に、築百年を超える邸宅を大切に守りながら生まれたこのホテルは、日本の数寄屋造りと北欧建築の静けさを融合させ、華美な装飾よりも、余白と静寂の美しさを湛える空間を創出している。

記憶を編むように過ごす、10室だけの物語

館内に用意された客室は全10室。それぞれ異なる設えで仕立てられており、すべてが一点ものの意匠と家具で統一されている。なかでも最上階の「凪月(なづき)スイート」は、暖炉を備えた90㎡の特別室。窓一面に広がる海と函館山の風景が、漁火とともに静かな夜を彩る。無垢材の一枚板を使った家具は道南の木工職人による手仕事。カーテンやファブリックにはヨーロッパの老舗メゾンの手織り布を用い、ベッドには英国「Vi-Spring」社のマットレスを採用。寝具には道南産の羊毛とリネンを使用し、地元の工房で一枚ずつ手縫いされたもの。香りはパーソナルディフューザーで選ぶことができ、五感すべてで旅の記憶を編む滞在が叶う。

空と湯が溶け合う、最上階の「凪の湯」

最上階にある展望湯処「凪の湯」では、函館・湯の川温泉から引かれた源泉が、かけ流しで惜しみなく注がれる。ガラス張りの湯船からは、津軽海峡と空が一体となって広がり、時間の境界をゆるやかに溶かしていく。設えには黒松や青森ヒバなど自然素材を贅沢に使用。伝統的な船底天井がまるで船室にいるような没入感を演出する。湯上がりには「灯の間」で、函館牛乳と利尻昆布を用いた“昆布ジェラート”と、地元の野草茶が提供される。甘さと塩味が絶妙に調和する味は、まさにこの宿だけの“湯の余韻”として心に刻まれる。

土地の記憶を味わう、モダン・ガストロノミー

ダイニング「灯(あかり)」では、料理長・松岡悠による“土地の記憶を辿る”現代的な料理が提供される。フランスと北欧で研鑽を積んだ松岡が、故郷・函館の風土を一皿一皿に表現。 夕食コース「風と灯」の一例:
  • 利尻昆布と白胡麻豆腐の前菜
  • 帆立の炙りと根菜のヴルーテ
  • 道南産エゾ鹿のロティ
  • 真昆布と洋梨のコンポート
地酒やナチュールワインとのペアリングも楽しめる。また、朝食では“海鮮重”と白味噌仕立ての味噌椀が提供され、朝の港町の静けさの中で心と体を優しく目覚めさせてくれる。

静けさを贅沢に味わう、旅人のための設え

Hotel 凪灯が大切にしているのは「語りすぎないこと」。宿としての存在を主張しすぎず、あくまで旅人の“静かな時間”に寄り添う姿勢を貫いている。完全予約制の体験プログラムも、すべてが“記憶に残る場面”として設計されており、例えば:
  • 函館港でのプライベートクルーズと船上アペリティフ
  • 建築士と巡る元町の文化財夜景散策
  • 道南産精油によるフルオーダー・アロマトリートメント
  • 冬季限定の函館山スノーシュー・サンライズツアー

旅の記憶に、そっと寄り添う一灯

Hotel 凪灯は決して声高に“ラグジュアリー”を謳うことはない。それでも、そこに流れているのは「静けさこそが最上の贅沢」という明確な思想。港の記憶に寄り添い、過ぎゆく時間に抗わず、旅人の心をそっとほぐしてくれる。宿を後にした今も、その灯りがどこかで静かに揺れているような、そんな余韻が心に残る。